朝食を終えた後に、與儀が張り切って声をあげる。

「街へ行こうよ!」

見ると、爛々と目を輝かせている。
いつにも増して、背後にキラキラと子供オーラを出しているのが見えるようだ。

「は?何で」

そんな與儀とは温度差の激しい花礫が、冷静に尋ねる。
街へ出ること自体は別に構わないが、その浮かれオーラは一体何だというのか。

「えへへー。平門さんからお許しが出たんだv
 ほら、もうすぐクリスマスでしょ?みんなでさ、プレゼントっていうか。 何か買おうよ」

お代は輪持ちだから〜と締りの無い顔で提案してくる。

「へえ。まあ金出してくれるってんなら行かなきゃ損だな」

他の大人が聞けば、可愛げのないガキだ、と見下したように見る花礫の発言も與儀は全く気にしない。
逆に花礫が話に乗ってくれたことを喜んでいる。

「わたしも、、平門にプレゼント」

でも何がいいかな、とツクモと與儀とで話し合いを始める。
そんな二人の会話を耳に流しながら、花礫は无を見る。

「つってもお前は特に欲しそーなモンねぇよな。あ、嘉禄か」

「?」「?」

あわあわと?を頭に浮かべまくる无に、花礫は ああ、と納得する。

「クリスマスっつーのはな・・・・・………………………………………………………………………………」

説明をしてくれようとしていたはずの花礫が急に黙ってしまい、无は更に焦る。

一方花礫はかあっっと顔を赤く染めたり、かと思えば青褪めたりしている。
花礫にとってクリスマスという行事は何の興味も無ければ、彼の白髭おじいさんの存在を信じているわけでもない。
だがクリスマスという一般知識は持っている。
クリスマスというのは?という説明の場合、派手なイルミネーション、御馳走、プレゼント等あるが
サンタの存在が一番欠かせない、クリスマスを象徴する説明であろう。

一瞬その説明を自分が无にするという、花礫にとってあまりにもイタいあり得なさに羞恥が込み上がってくる。
あと少しで説明をしてしまうところだったと、自己嫌悪してしまう始末だ。

「嘉禄さんのことはさ!サンタさんに頼めばいいよ!」

そんな花礫の心情とは裏腹に、與儀は「サンタさんっていうのはねー」と音符を飛ばしながら无に説明を始める。
无は无で、うわぁっと目を輝かせ、先程の與儀と寸分違わずキラキラオーラを散ばせている。

「與儀はもうサンタさんへのお願いはしたの?」

ツクモの質問に與儀はうんっと嬉しそうに、元気よく返事を返した。

「は?」

目の前で起こったやりとりに花礫は目を見開く。

待て待て待て。
无に聞くのなら分かる。
または與儀がツクモに聞くのなら分かる。
何故ツクモが與儀に聞いているのか。

「あ、もしかして花礫くんサンタさん信じてないの?ダメだよ、プレゼントもらえないよ!」

本当にクールなんだから〜と笑う與儀に殺意が湧いても致し方ないだろう。
花礫は代わりにゴッと拳を振り上げ殴ることで妥協した。

「いたあ!!!」

「てめーは幾つだ、このガキ!!」

「なっ、だって俺のところには毎年サンタさん来てくれるもん!」

「はあ?!」

更に怒りを増す花礫の裾をくいくいっとツクモが引っ張る。

「サンタを信じる與儀が面白いからって、平門が準備してるの」

こそっと打ち明けられた真実は花礫にとって心底どうでもいい…とういうより、頭痛を覚えたくなるほどの 情けない事実だった。



街へ出ると、與儀とツクモは輪のみんなと平門にへとプレゼントを選び始める。
ついでに言うと、與儀はサンタへのプレゼントも買うようだ。

花礫は特にあげる人もいないので、自分の欲しそうなものはないかと物色する。
物色しながら无のお守りだ。
何せ過去に幾度となく傍を離れ迷子になる无だ。
目を離さないようにしないといけない。
興味津々にオモチャやクリスマス用の装飾を見ながら歩く无の後ろをついて行くように歩きながら、
そういえばサンタの話を與儀から聞いたはずだと、无に話しかける。

「无。さっき與儀が言ってた・・・サンタに、何かお願いしたのか?」

「え?えと」

わたわたと意味もなく手をさまよわせる。

「何だよ。嘉禄?」

朝にも言ったことをもう一度聞いてみる。

「ううん!嘉禄の事は自分で見つけるんだ。
 花礫やみんなが探してくれるから、嘉禄は見つかるから、お願いはしてないよ」

それは嘉禄のお願いをしていないのか、願い事自体をしていないのか。
相変わらず无の言動は曖昧なものが多い。

「えと、別のお願いした」

そんな花礫の疑問に答えるように続きを話す。

「へえ。嘉禄以外に欲しいモンなんてあんだ。食いもん?」

またはオモチャとかだろうか。
物に執着するところをあまり見たことがない。

「みんなで楽しく過ごしてね。花礫が隣にいますようにって」

「…は」

「本当はね、與儀からもらった羊さんがひとりで淋しそうだったから、友達をお願いしようと思ったんだけど
 それは今日俺が買えばいいんだもんね」

そう言って辿り着いたぬいぐるみコーナーで、どの子がいいか真剣に悩んでいる。
というより、どの子も可愛くて素敵だと迷いすぎて、涙ながらに選んでいる。

みんなで過ごせるようになんて、わざわざ願わなくてもそうなるだろうに。

无の場合、すぐ側にいた嘉禄が急に姿を消したのだから不安なのだろう。
みんなと無事クリスマスを過ごせたところで、サンタがいる証明にはならないだろうが
それでも无は、願いが叶ったとサンタの存在を信じきるだろう。


无の背丈では届かない上の方にあるカメのぬいぐるみを取ってやりながら、
ありがとうと言う无の言葉を聞きながら、
嬉しそうな顔を横目に見ながら、

さて、自分用と无用と。
何を買おうかと物色を始める花礫は、とりあえず手近にあるコケトカゲのぬいぐるみを手にとった。











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