発酵肥料の化学的な作り方

目次

  1. 発酵肥料関連用語
    @分解合成される物質 A発酵肥料で働く菌 Bその他関連用語
  2. 発酵肥料(ボカシ)の三段階発酵
  3. ボカシ肥を作るのに必要な材料と組合せ例

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※転記・参考、文献・ホームページ

ルーラル電子図書館Wikipedia土つくり耕楽園|Microsoftエンカルタ百科事典|
家畜ふん尿処理利用の手引き2004】北海道立総合研究機構畜産試験場
【発酵肥料のつくり方・使い方】薄上秀男 2009 農文協


1.発酵肥料関連用語

先ず始めに…、聞き慣れない物質の名前が頻繁に出て理解しにくいと思うので、
発酵肥関連物質の、種類と性質を解説しておきたいと思います。

@分解合成される物質

分解合成される物質には下記の様な物があり、左側程分子数が多く複雑な構造になっています。

タンパク質>アミノ酸>セルロース、ヘミセルロース、リグニン>デンプン

>グリコーゲン>デキストリン>麦芽糖>ブドウ糖、脂肪酸

※糖の種類
多糖=セルロース、デンプン、グリコーゲン、デキストリン
二糖=麦芽糖、乳糖、ショ糖
単糖=グルコース、ガラクトース、フルクトース、ヘキソース

タンパク質
L-アミノ酸が多数連結してできた高分子化合物であり、生物の重要な構成成分のひとつである。

アミノ酸
1分子中にアミノ基-NH2とカルボキシル基-COOHとをふくむ有機化合物のことで、生物が生きていくうえで不可欠なタンパク質はアミノ酸からできている。アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシンおよびバリンの20種類がある。

セルロース
分子式(C6H10O5)nで表される炭水化物(多糖類)である。植物細胞の細胞壁および繊維の主成分で、天然の植物質の1/3を占め、地球上で最も多く存在する炭水化物である。

・ヘミセルロース
植物細胞壁に含まれ、セルロースを除く、水に対して不溶性の多糖類の総称。セルロースとリグニンを結びつける働きをする。

・リグニン
細胞壁はセルロース、ヘミセルロース、リグニンの3成分からなっており、それぞれの構成割合は50%、20〜30%、20〜30%とされる。針葉樹はリグニンが多く、ヘミセルロースが少ないのに対し、広葉樹は逆である。細胞壁では、糸状のセルロースの束の隙間をリグニンとヘミセルロースが埋める。細胞と細胞との間はリグニンによってしっかりと接着されている。

デンプン
分子式(C6H10O5)n であらわされる炭水化物で、穀類の種や球根、塊茎に多くふくまれている。白色、無味無臭で粒状のものと粉状のものがある。分子式のnの値は約50から数千までの値をとるが、それに対応して数千から数万の原子からなる分子となる。デンプンは、アミロースとアミロペクチンの2種の成分からなっている。種類によってことなるが、通常のデンプンの約20%はアミロースで、C6H10O5でしめされるユニットがコイル状にくるくる巻きながら、全体的にみると連続した長い直線状につながった構造をしている。アミロペクチンもC6H10O5のユニットがつながってできているが、ところどころで枝分かれした構造をしている。 デンプンは緑色植物の光合成によってつくられ、細胞壁やかたい植物繊維に蓄積される。デンプンを酸化して二酸化炭素と水にすると、エネルギーが放出されるので、デンプンは植物のエネルギー貯蔵庫ともいえる。植物中にみられるデンプン粒の大きさ、形、特徴は植物種によってちがっている。

グリコーゲン
動物の肝臓や筋肉の細胞中にふくまれている多糖類(→ 糖質)の一種。ブドウ糖の重合体で、必要に応じてアミラーゼによってデキストリン、麦芽糖、ブドウ糖に加水分解され、水にとけてエネルギー源としてつかわれる。グリコーゲンは酵母や細菌にふくまれることもある。

デキストリン
分子式(C6H10O5)nで表される数個のα-グルコース(ブドウ糖)が多数連結した物質の総称で、かつては糊精(こせい)と呼ばれ、糊として使われる。食物繊維の一種であり、デンプンの加水分解により得られる。白っぽい炭水化物で、デンプンとマルトースの中間にあたる。

麦芽糖(マルトース)
α-グルコース2分子が結合した還元性二糖。化学式は(C12H22O11)である。水飴の主成分となっている。

ブドウ糖(グルコース)
分子式C6H12O6で表される、代表的な単糖のひとつ。筋肉や身体の各部は、おもにグルコースを燃料として消費し、エネルギーを生成する。

脂肪酸
動物の場合、皮下や筋肉、骨髄、内臓の表面などに脂肪組織として蓄積されているが、植物の場合は種子に集中して存在している。脂肪はエネルギーなどの貯蔵組織として機能しており、食物としてとりいれられ、体内で酸化されると、1gにつき9kcalのエネルギーを発生する。飽和脂肪酸として、パルミチン酸(C16H32O2)、ステアリン酸(C18H36O2)、不飽和脂肪酸として、オレイン酸(C18H34O2)、リノール酸(C18H32O2)、リノレン酸(C18H30O2)などがある。

・アセトアルデヒド
酒類をのむと、体内で酒の中のエチルアルコール(エタノール)が酸化されて炭酸ガスと水になる。このとき中間物質として生じるアセトアルデヒドが、酒酔いをひきおこすといわれている。化学式CH3CHO。

・酵素
タンパク質で出来ており、あらゆる動植物の中にあり、特に成長点に多い。酸化・還元・転移・加水分解・脱離・異性化・合成等の、化学反応をおし進めている。(例として、人間の口の中にあるアミラーゼが、ご飯の中のデンプンを分解して、麦芽糖やブドウ糖にする。麦芽に含まれる酵素を利用し、デンプンを糖化してビール・飴などを作る、など。)
アミラーゼ:デンプンをデキストリン、麦芽糖に分解。(コウジカビ)
マルターゼ:麦芽糖をブドウ糖に分解。(コウジカビ)
インベルターゼ:ショ糖(白砂糖)をブドウ糖と果糖に分解。(コウジカビ)
プロテアーゼ:タンパク質をアミノ酸に分解。(納豆菌)
オキシダーゼ(酸化酵素):色素・香り・有機酸を作る。(酵母菌)
リパーゼ:脂肪酸をグリセリンに分解。(納豆菌)
チターゼ:繊維を分解。(納豆菌)

・ビタミン(補酵素)
酵素の活性化を助ける働きをし、反応スイッチの入り切りをする。育苗段階で、砂糖を加えて葉面散布をすると、生育がしまった感じになる。

・植物ホルモン
オーキシン、ジベレリン、サイトカイニン、成長抑制物質の4つのグループにわかれる。 
オーキシンは、おもにタンパク質を合成し、植物の成長をうながす。葉を成長させたり、植物が光のほうへのびるようにしたり、根をのばしたりする。
ジベレリンは、おもに植物の中心となる茎のタンパク質合成をおこなう。
サイトカイニンは根でつくられて、葉や実にいき、細胞の分化などをおこなう。
成長抑制物質は、タンパク質の合成を抑制することによって、葉や花が自然におちるようにしたり、球根をつくったりする。また、オーキシンをこわすことによって、葉や花をおとしたり、実を熟させたりする。

詳しくは【有機物質の種類】をご覧ください!

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A発酵肥料で働く菌

・各種糸状菌

・乳酸菌(ラクトバチルス・アシドフィルス)

・納豆菌

Copyright (C) 奄美自然科学研究所

・酢酸菌

Copyright (C) 酢酸菌研究会

・放線菌
(Bifidobacterium adolescentis)

Copyright (C) Wikipedia

酵母菌
(S.cerevisiae)
右上は出芽中

Copyright (C) Wikipedia

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・菌の種類と性質

糸 状 菌 類

コウジカビ属

アスペルギルス・オリゼー
(黄麹菌、酒・酢・味噌に利用。
デンプンを糖化するアミラーゼの力が非常に強い。)

アスペルギルス・ソーエ
(醤油・味噌に利用。タンパク質をアミノ酸に分解するプロテアーゼの力が強い。)

アスペルギルス・ニガー
(黒麹菌、アワモリに利用。デンプン糖化力が強い。)

アスペルギルス・レペンス
(鰹節に繁殖。タンパク質・脂肪分解力が強い。)

ごく普通に見られる不完全菌(有性生殖が未発見で分類学的な位置が分らない菌)の一群である。ヒトに感染して病気を起こすもがあるが、健常者が発病することは比較的少ない。食品に生えたときにマイコトキシン(カビ毒)を産生するものもある。
分生胞子の塊は柄の先端に丸くついているので、肉眼で見るとごく小さな毛玉か何かが並んでいるように見え、黄色、深緑、褐色、黒などの色をしている。
落ち葉や動物の糞からは必ずといってよいほど出現する。土壌からも出ることが多く、放置した食品などにも頻繁に出現し、パンや餅に生えるカビは、これかアオカビのことが多い。
デンプンをブドウ糖に、タンパク質をアミノ酸に分解する性質が強く、種によっては、効果的に脂肪を分解吸収する。
活動温度は8~45℃、45℃以上になると死滅するが、分泌した酵素は糖化作用を続ける。しかし、全滅するわけではなく、表面の温度の低いところに残ったり、空気中に胞子を飛ばして移動する。

菌界:子嚢菌門:ユーロチウム菌綱:ユーロチウム目:マユハキタケ科:コウジカビ属

クモノスカビ属

リゾープス・ニグリカンス
(空気中に最も多いカビ)

湿った有機物表面に出現するごく普通のカビで、基本的には腐生であるが、弱い寄生菌として植物の病原体になる場合がある。柔らかい果実について、その腐敗を早めることもある。
菌糸は、イチゴのツルの様な枝を作り、先端から数本の胞子嚢枝を出して、無性生殖として増えて行く。大半のクモノスカビは、好適な株同志が接触しない限り有性生殖はしない。
菌叢(きんそう)は灰色に黒い斑点があり、気菌糸の長さは、数センチ以上になる。クモの網目のように見えるところからこの名前が付いている。

菌界:接合菌門:接合菌綱:ケカビ目:ユミケカビ科:クモノスカビ属

ケカビ属

ムコール・ムセド
(ケカビで最も広く分布)

胞子嚢枝は菌糸体に直立して伸び、分岐せずその末端に胞子嚢を生ずる。
菌叢は灰白色でつやがあり、綿毛状に見え、気菌糸の長さは、3~4センチになる。
土壌、糞、食品、その他、様々な湿った有機物の上に出現する。特に強い病原性を示す、というものはないが、免疫力が低下した病人の肺で増殖して、ムコール肺症を引き起こす例もある。
生殖方法はクモノスカビと同じ。

菌界:接合菌門:接合菌綱:ケカビ目:ケカビ科:ケカビ属

細 菌 類

バチルス属

バチルス・サブティリス
(枯草菌)

バチルス・サブティリス・ナットー
(納豆菌)

大きさ千分の2~3ミリ程の、好気性有胞子桿菌で、芽胞を形成し熱や消毒薬などに対する耐久性を示す。ヒトに対する病原性は持たない。
枯草菌の亜種納豆菌は、稲藁に多く生息し、稲わら1本にほぼ1000万個が胞子の状態で付着していると言われる。
40〜50℃で生育し、タンパク質の分解力、デンプンの糖化力、脂肪分解力がともに強力で、セルロースをも分解する事が出来る。土を団粒状化させる働きもある。

真正細菌:モネラ界:フィルミクテス門:バチルス綱:バチルス目:バチルス科:バチルス属:枯草菌

ラクトバチルス属
(乳酸菌)

ラクトバチルス・ブルガリス
ラクトバチルス・アシドフィルス
ラクトバチルス・カゼイ
ビフィドバクテリウム・ビフィダム

(ヨーグルトや乳酸菌飲料に利用)

ラクトバチルス・サケ
(日本酒用)

ラクトバチルス・ククメリス
ラクトバチルス・プランタラム
ラクトバチルス・ブレビス

(ぬか味噌漬けに利用)

ラクトバチルス・ソヤエ
(味噌・醤油用)

代謝により乳酸を生成する細菌類の非学術的な総称。桿菌で、ヨーグルト、乳酸菌飲料、漬け物など食品の発酵に寄与する。一部の乳酸菌は腸などの消化管(腸内細菌)や膣の内に常在して、他の病原微生物から生体を守り、恒常性維持に役立っている。
グルコース(ブドウ糖)などの糖類から乳酸をつくる乳酸発酵とよばれる働きをし、pH2.0〜2.5という殺菌力のある強酸性の乳酸や有機酸を多く出す。
40〜50℃の中温を好むが、100℃になっても死なない。
乳酸菌の出す有機酸は、土の中の溶けにくいミネラルを溶かすなどして、植物が吸収しやすい働きをする。
更に、植物内で対病性を高め、長雨でも水脹れしない体質を作る。

アセトバクター属
(酢酸菌)

アセトバクター・アセチ
(酒かすからの食酢作りに利用)

エタノールを酸化して酢酸を生産する細菌の総称である。好気性であり、酸を生産する為それらには耐性を持つ。いずれも棒状の桿菌で、多くは連鎖状につながっている。運動性はないものが多いが、細胞の周囲に鞭毛をもち、運動するものもある。増殖の最適温度は15〜34℃である。
天然には、糖や植物性の炭水化物が酵母により醗酵してエタノールが生成しているような場所に存在し、食酢もろみ、酸敗した酒類、果実類などの糖やアルコールに富む天然物などに存在する。
酢酸発酵をおこうなうことを利用して酢などの生産に利用されるが、酒などを酸敗させるため有害でもある。

真正細菌:モネラ界:プロテオバクテリア門:α-プロテオバクテリア綱:ロドスピリルム目:酢酸菌科:アセトバクター属

酵 母 菌 類

サッカロミケス属

サッカロミケス・セレビシエ
(パン発酵、ビール・ワインの
アルコール発酵に利用)

サッカロミケス・サケ
(清酒酵母、日本酒醸造に利用)

サッカロミケス・エリプソイディウス
(ブドウ皮に多く、ワイン醸造に
利用)

酵母(イースト)は、卵型や楕円形をした、単細胞の子嚢菌類に対する総称であり、細胞の一部が膨らんで芽を出して増える。この増殖を行う時、菌体内で様々な物質を作り出して分泌する。それが、アミノ酸・ビタミン・ホルモンなどである。
酵母菌は合成はするが分解はせず、嫌気的条件ではアルコール発酵を始めてしまうので、切り替えしをして環境を整えて増殖させる。30℃以下で働き、温度を下げすぎたり水を掛けたりすると腐敗菌が入ってしまう為、要注意!

菌界:子嚢菌門:半子嚢菌綱:サッカロミケス目:サッカロミケス科:サッカロミケス属

放 線 菌

アクチノマイセス属

アクチノマイセス属
(抗生物質生産に利用)

一般に、グラム陽性の真正細菌のうち、細胞が菌糸を形成して細長く増殖する形態的特徴を示すものを指していた。現在は、遺伝子の塩基配列による分子系統学に基づいているため、桿菌や球菌も放線菌に含められるようになった。
乾燥した寒いところを好み、抗生物質を作り病原菌をやっつける。pH9くらいの強いアルカリの分解酵素を出し、分解力は納豆菌並みに強く、殺菌力も強い。
発酵肥料を作る時、この菌を増やしたいときは、最後の方で落ち葉の下の綺麗な山土を混ぜると良い。土の匂いは放線菌の匂いである。

真正細菌:モネラ界:放線菌門:放線菌綱:アクチノバクテリア亜綱:アクチノマイセス目:アクチノマイセス亜目:アクチノマイセス科:アクチノマイセス属

※参考として…、これらの菌は、分類学上、下表の位置にあります。

原核生物 細菌(バクテリア) モネラ界 枯草菌(納豆菌)、酢酸菌、乳酸菌、放線菌、根粒菌、病原菌など
古細菌(アーキア) メタン菌、高度好塩菌、好熱好酸菌など
真核生物 単細胞 原生生物界 藻類、粘菌、アメーバ、ミドリムシなど
菌界 酵母菌
多細胞
コウジカビ、ケカビ、クモノスカビ、アオカビ、キノコ類など
植物界 コケ植物、被子植物、裸子植物など
動物界 昆虫、両生類、魚類、鳥類、哺乳類など

※原核生物と真核生物
原核生物は原核細胞を一つしか持たない単細胞生物である。原核細胞の遺伝子は核膜に包まれておらず、真核細胞の様に、細胞核、葉緑体、ミトコンドリア、発達した鞭毛なども存在しない。原核細胞は真核細胞より小さく、直径は0.3μm〜10μm(マイクロメートル:100万分の1m)。真核細胞は直径10〜100μmである。単細胞の真核生物が原生生物と呼ばれる。

※細菌(バクテリア)
真正細菌とも呼ばれ、sn-グリセロール-3-リン酸の脂肪酸エステルにより構成される細胞膜を持つ生物群。古細菌(メタン菌・高度好塩菌・好熱好酸菌などで、細胞膜を構成する物質が違い、アーキアと呼ばれる。)、真核生物、とともに全生物界を三分する。原核細胞からなる微小な単細胞生物で、普通は細胞の分裂で増殖する。分類学上はモネラ界。

※菌類
細菌・変形菌などと区別するために真菌類とも呼ばれる。一般にキノコ・カビ・酵母と呼ばれる生物が含まれる。外部の有機物を利用する従属栄養生物であり、分解酵素を分泌して細胞外で養分を消化し、細胞表面から摂取する。菌類の多くは、菌糸とよばれる原形質をふくんだ細長い管の集まりによって構成され、普通胞子によって繁殖する。分類学上は菌界。

※カビと酵母
カビは、糸状の菌糸と呼ばれる細胞を伸ばす多細胞性の菌類、酵母は菌糸を作らない単細胞性の菌類に対して与えられた一般名称。

詳しくは【生化学の基礎】をご覧ください!

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Bその他関連用語

・リービッヒの無機栄養説
植物は無機質の養分でなければ吸収できない、という学説。現在ではグルタミンやアルギニンなどの有機態窒素でも、直接吸収できることが明らかになった。(1979、森・西沢)
どういう事かと言うと、下図の様に、ピンク文字の過程を省略してのタンパク質合成が可能で、植物の負担を大幅に軽減することが出来るのである。ここで取り上げている【土作り】とは、根が吸収出来る各種有機物を作り出すことに他ならない。

有機物→細菌で分解→アンモニウム塩(NH4+) →亜硝酸塩(NO2-)→硝酸塩(NO3-)→根に吸収
  ↓                                                 
根に吸収→タンパク質合成←各種アミノ酸←ケト酸(有機酸)←グルタミン酸←アンモニウム塩

・腐敗発酵と芳香発酵
腐敗発酵とは、細菌が繁殖して異臭を放ち、最終的にはアンモニアに分解される発酵。
芳香発酵とは、こうじ菌(甘酒の香り)→納豆菌(醤油の香り)→酵母菌(酒屋の香り)と進む発酵で、各種アミノ酸、ホルモン、酵素、ビタミン、有機酸、その他生育促進物質が生成される。

・放線菌堆肥
放線菌を豊富に含み、耕地に施して病気を防ぐ力が強い堆肥。ジャパンバイオファームの小祝政明氏が開発。放線菌が生産するキチナーゼは、根腐萎ちょう病や青枯病などを引き起こすフザリウム菌の細胞壁のキチンを分解するので、これらの病気を抑制するほか、有機物分解能力に優れ、作物の生育促進にも働く。
発酵過程の最初から最後まで中温発酵で、放線菌が優勢となる六〇度前後の中温に保つ。病気を引き起こす低温菌を死滅させつつ、高温にしないことで発酵が長時間持続し、有機物の分解を促す。
耕地にはそこによく馴染んだ微生物がせめぎあって暮らしており、よその微生物が入り込む余地が少ない。放線菌堆肥は、堆肥自体が放線菌の馴染んだ専用の住処とエサでもあるので、耕地に定着して効果を発揮する。
なお、この堆肥には同じく中温菌の枯草菌や酵母菌なども多く含まれ、放線菌と同様に働いていると考えられる。

・中温発酵
一般に「堆肥」というと発酵温度が高いほうが良質になると思われがちだが、必ずしもそうとは限らない。堆積初期の温度が八〇度ぐらいまで上がる高温発酵では、糖分・デンプン・タンパク質など分解しやすいものだけが分解し、オガクズやバークなど難分解性の物質はほとんど分解せずに終わってしまう。いっぽう、最高温度が六五度程度で、五〇〜六〇度で推移する中温発酵では、積算温度が高く、かつ温度が高すぎることによって生じるタンパク変性も受けづらいので、放線菌をはじめとした多様な菌が増え、さまざまな分解酵素を分泌する。その結果、分解しにくい繊維質などまで分解が進み、土壌の団粒化促進に大きく貢献するという。

・中熟堆肥・未熟堆肥
中熟堆肥は、雑草の種子を殺すなど、未熟の害を除くために、一度は高温発酵させるが、まだまだ微生物のエサが多い状態の堆肥。未熟堆肥はほとんど発酵していないもの。大分の西文正さんは、完熟堆肥より中熟堆肥のほうがエサが残っているぶん微生物がよく働き、畑にいろんなキノコが生え、キノコが生えた年ほどナスやトマトがよくできる、という。西さんが使う堆肥は牛糞にバークを混ぜて三カ月ぐらい積んだもので堆肥はまだ熱い状態。これを空気が多い表層一〇cmのところに表層施用しすき込む。未熟堆肥を使う場合も、米ヌカボカシと未熟堆肥をいっしょに畑にふり、浅く一〇cmに耕し、三週間から一カ月おいていい菌をじっくり殖やして、つまり土ごと発酵させてから定植する。

・キレート化と錯体化
吸収されにくい養分を吸収しやすくする仕組みの説明によく使われる。キレートとは、ギリシャ語で「カニのハサミ」という意味で、吸収されにくい養分をアミノ酸や有機酸によってカニバサミのようにはさみ込んで、吸収されやすい形に変えたり、反対に有害物質を吸われにくくする。作物が根酸を分泌して周囲にあるミネラルをキレート化して利用しやすくするのはその典型である。

錯体とは、発見された当初は複雑すぎて何者かがわからなかったため、「複雑」ということから「錯綜」の「錯」をあてたのがその語源である。キレート化と同義で、よく、肉をキャベツで包み込んだ料理「ロールキャベツ」にたとえられる。つまり、金属(お肉)を有機物(キャベツ)が包み込み、吸収されやすい一つの物質のように振る舞う。光合成を司る葉緑素(クロロフィル)は苦土を包み込んだ錯体だし、血液中のヘモグロビンは鉄を包み込んだ錯体である。土ごと発酵は、土中の有機酸やアミノ酸を豊富にし、キレート化・錯体化によって、ミネラルを作物が吸収しやすい形に変えていると考えられる。微量要素が錯体になると、イオン状態よりも数百から数百万倍の活性を示す。

詳しくは【生化学の基礎】をご覧ください!

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2.発酵肥料(ボカシ)の三段階発酵

発酵段階 作用 菌種 働き 適温 環境
段階 糖化作用 コウジカビ デキストリン・ブドウ糖・アミノ酸を作る。 中温33~38℃ 微酸
セルロース分解 納豆菌 セルロースなどを分解。 高温70℃位 アルカリ性
段階 タンパク質分解 納豆菌 こうじ菌の作った糖を食べ、蛋白質を分解してアミノ酸を作る。 中温40~50℃ アルカリ性
清掃・ 消毒 乳酸菌 糖分を食べ、温度が下がって来ると、糖類から乳酸を作り、後片付けと消毒の働きをする。 中温30~45℃ 酸性
段階 アミノ酸等合成 酵母菌 糖分を食べ、温度が下がって来ると、嫌気的条件ではアルコール、好気的条件では、乳酸菌と共同でアミノ酸、タンパク質、ビタミン、有機酸などを作る。 低温26~27℃ 酸性
抗生物質生産 放線菌 抗生物質を作り病原菌を殺す。強いアルカリの分解酵素を出し、分解力は納豆菌並みに強く、殺菌力も強い。 常温 アルカリ性
  1. 発酵第一段階(糖化作用)
    コウジカビなどが活躍して、タンパク質・アミノ酸・デンプンなどを、単糖類に分解。中温・微酸性。
    納豆菌が活躍して、セルロースを分解。高温・アルカリ性。
    終了時は淡い茶褐色になり、甘酒の香りがする。
    40%程度の水を加えて攪拌すると堆肥化が始まり、数日から数週間で発熱が始まる。発熱が始まってから一週間ほどで、材料の温度が45℃ぐらいに上がって来る。(水分が少ないと好気性菌中心に働き、水分が多いと嫌気性菌しか活動できなくなる為、水分の調整が大切となる。酸素の供給が不足して嫌気的な状態となると有機酸が生じて酸化し、堆積物の温度上昇が遅れがちとなる。)
    この時期は好気的に分解が進み、増殖が早いコウジカビなどが各種酵素を分泌し始め、デンプン・麦芽糖・ショ糖・タンパク質を、デキストリン・ブドウ糖・アミノ酸に変える。
    温度が50℃を超える様になると、コウジカビの活動が鈍り納豆菌が増えてくる。さらに、70℃まで上昇すると、病原菌・糸虫・ウィルスなどが死滅し、ヘミセルロース・セルロース・タンニンなどが分解され易くなる。
    水分が60~70%になる様に加水しながら攪拌を数回行い、高温を維持して好熱・好気性の納豆菌を増殖させる。納豆菌が働き、ヘミセルロースを分解しセルロースをむき出しにする。この時、微生物は酸素を盛んに利用して酸素不足の環境をつくり出し、嫌気性のセルロース分解菌が働く。
    ヘミセルロースやセルロースの分解がピークを越えると、堆肥の温度はゆっくりと下がり、難分解性有機物のリグニン分解が、主として担子菌(キノコ)の働きにより始まる。リグニンは、その後じっくりと時間をかけて分解される。
    温度が下がると、再び中温性の細菌や糸状菌が増えてくる。表面に、綿毛状の菌糸体コロニーが形成され、色が淡い茶褐色に変わったら第一段階の終了である。
  2. 発酵第二段階
    納豆菌が活躍して、タンパク質をアミノ酸にまで分解。中温・アルカリ性。
    乳酸菌
    が活躍して、糖類から乳酸を作り、後片付けと消毒の働きをする。中温・酸性。
    終了時は暗褐色一色に変わり、醤油屋の香りがする。
    温度が50℃を割る様になると、コウジカビは一夜にして納豆菌に乗っ取られ、タンパク質分解の工程に入る。前の段階でコウジカビが分泌した酵素と、納豆菌などが分泌したプロテアーゼ酵素の働きで、タンパク質をアミノ酸まで分解し、さらに有機酸・アンモニア・ホルモンなどに分解される。
    温度が45℃に低下する頃には、豊富な糖分やアミノ酸を餌に急激な乳酸菌の増殖が始まる。
    第二段階に入って24時間経過すると、綿毛状の菌糸体コロニーが見られなくなり、湿気が無くなって、内部は暗褐色一色に変わる。醤油屋の香り(アミノ酸の匂い)がして来るので、この段階で乳酸菌を追加する。薄く広げて時々攪拌し、乳酸菌の後片付けと消毒(酸化)の働きを助けると、納豆菌も死滅する。
    温度も30℃前後に下がって来て第二段階の終了である。
  3. 発酵第三段階
    酵母菌が活躍して、各種のアミノ酸・有機酸・タンパク質を合成。低温・酸性。
    放線菌が抗生物質を作り、殺菌力・制菌力の強い発酵肥料にする。常温・アルカリ性。
    終了時は、表面はゴマ塩状になり、内部には菌塊が見られ、酒屋の香りがする。
    さらに温度が下がり30℃を割った頃に、酵母菌と山土を添加してよく攪拌する。酵母菌は、嫌気的条件の場合アルコールを作るのに専念するので、再度攪拌して空気を入れてやると(好気的条件)、乳酸菌と共同でアミノ酸やタンパク質、ビタミン、有機酸などを作る。
    発酵が進んで半乾燥状態になると、表面は真っ白でスポンジ状になり、内部にはピンポン玉大の菌塊が見られる様になる。さらに2~3回攪拌して乾燥させると、ゴマ塩状の発酵肥料が出来上がる。
    乳酸菌と酵母菌は、自ら分泌した酸によって死滅し、代わって放線菌が増殖して、抗生物質を作り始める。

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3.ボカシ肥を作るのに必要な材料と組合せ例

我家で揃える事の出来る、材料の組み合わせ例を挙げてみました。出来れば、山・田・畑・海の物をバランス良く入れるのが理想的ですが、窒素・リン酸・カリのバランスはまあまあといったろころですか?
下記の他にも、有機酸・ホルモン・植物ビタミン・酵素などを多く含む、パワーアップ資材(例、若い草木の芽、抹茶、木の実、海藻、みかん皮など。)を加えると良いです。

  窒素率/量 リン酸率/量 カリ率/量 C/N比 pH 組合せ量
米糠油粕 2.40%/1,200g 5.80%/2,900g 2.00%/1,000g 15 酸性 50kg
落ち葉 1.28%/64g 0.40%/20g 0.34%/17g 30~50 弱酸性 5kg
菜種油粕 5.00%/1,750g 2.60%/910g 1.40%/490g 10以下 酸性 35kg
魚粕 9.10%/910g 4.10%/410g 1.20%/120g 10以下 アルカリ性 10kg
大豆油粕 7.00%/700g 1.50%/150g 2.50%/250g 10以下 弱アルカリ 10kg
木灰 0.00%/0g 1.50%/300g 7.00%/1,400g アルカリ性 20kg
腐葉土 1.00%/500g 0.50%/250g 1.00%/500g 15~25 弱酸性 50kg
稲わら 0.90%/180g 0.30%/60g 2.60%/520g 50~60 弱酸性 20kg
合計 5,304g 5,000g 4,297g 200kg

※N・P・Kの%値は平均値

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