ニュージーランドの疫学調査
子宮ガンの検診で、子宮頸部の上皮内癌(早期の癌)と診断されながら
 治療を受けなかった女性(750人20年間追跡した結果である
医者が薦める不養生/遠山高史、新潮出版より


癌の中で取り扱かいが容易とされる子宮頸癌は早期の癌と診断されると、通常はことごとく手術となってしまう。取ってなくなってしまうので、早期の癌に自然消滅があるなどと確かめられない。集団検診によって、子宮頸部の上皮内癌(早期の癌)と診断されながら、
治療を受けなかった女性を、20年間追跡したニュージーランドの疫学調査がある。このような女性750人のうち、子宮頸癌となった者は、10人(1.3%)しかいなかった。しかも、検診で見つけられた上皮内癌から本当の癌に進展したと認められたのは2例しかなく、他は、当初の上皮内癌とは関係なく起こったものと考えられたという。  

このことは別のことからも裏づけられた。子宮の集団検診をしている地域の子宮癌罹患率と、していない地域の罹患率はほとんど変っていなかったのである。  上皮内癌の病理所見(視覚的形態的診断)と発達した子宮癌の病理所見が似ていたことから、おたまじゃくしはなまずに似ているからなまずの子式の発想で、上皮内癌は子宮頸癌の子供と思われたのではなかろうか。  上皮内癌といわれて、それが本当の癌に発達するのは750人中2人しかいないとしても、子供を後々望まないのなら、子宮を取ってもいいのだろう。ただ、日本の婦人科医がこの確率を頭に入れて、患者に手術を勧めてきたとは思えない。  むろん、ニュージーランドの疫学調査を100%うのみにはできないにしても、日本の癌学者がこの論文を否定しうる根拠を示し得ないことは確かなのである。従って、日本の癌医学は定量的に未来の予測をなし得ておらず、科学とはまだいえる段階に達していない。

 
 
(管理人の解説)
 
改めて要点を書くと
 ・治療を受けなかった女性750人の中で、
 ・20年の間に
本物の
子宮頸癌になった人はたったの10人(1.3%)でした。
 ・しかもその10人のうちで、
 ・検診時に見つけられた上皮内癌が進行したものは2例(0.3%)しかありませんでした
 ・他は検診時の上皮内癌とは関係なく出来たガンでした(1%)

と言うことです。

検診を受け、上皮内ガンと言われた人750人中、2人しか本物のガンの人はいなかった!
この割合は素直に治療を受けた人も同じ!つまり・・・

子宮ガンの発見率から13万人が検診を受け、その内約3000人にガン宣告がされた事に相当します
宣告された3000人のうち、本物のガンを見つけてもらった人はたったの8人!
2200人余りが不要な手術を受けた(750人は治療拒否)

本物のガンを見つけてもらった8人を除く約13万人が意味のない検査を受け
2200人あまりが不要な手術を受けて治療費を払ったことになるのです

子宮ガンを参照していただければ1目瞭然ですが、
最近50年間の子宮ガンによる死亡率(10万人あたり)の変化と子宮ガン検診がいつから行われはじめたかを示す下図も参考に、子宮ガンの検診や治療にどれほどの意味があるのかを考えてみてください



(国立がんセンターHPの統計および近藤誠著書の資料から作成)

参考資料
治療法の選択 【子宮頸がん】  近藤誠著「がん治療総決算」文藝春秋刊より


従来日本では、1期と2期は手術、3期、4期は放射線治療とされてきました。しかし、1期と2期を手術する方針には幾つか問題があります。第1に、1b期以上だと広汎子宮全摘術が行われるのですが、その合併症・後遺症は深刻です。多くの患者は「術後人生が変ってしまった」と語ります。第2には、日本では2b期でも、ほとんどの患者で手術をしていますが、がんを取り残してしまうことが多いので、手術不可と考えたほうがよい進行度です。実際、日本の2b期の統計では、9割以上が術後、骨盤に照射しています(再発予防のため)。しかし術後照射は、手術による合併症・後遺症の程度・頻度を一層高めます。術後に放射線治療をするくらいなら、最初から放射線だけで治療すべきです(つまり、手術された2b期の9割は放射線治療だけのほうがよかった)。

1期、2期で、くじ引き試験が行われています(イタリア)。1b期と2a期の患者を被験者として、2つのグループに分け、片方には広汎子宮全摘術を、他方には放射線治療を行ったのです。結果、両群の生存期間は同じでした。しかし、合併症・後遺症は手術をしたグループのほうが多かったのです。1部の患者には、術後に放射線治療を加えているのですが、その患者たちの合併症・後遺症が最悪でした。この試験で2b期の患者を被験者としなかったのは、手術が劣っていることが明白だからでしょう。


以上を要するに、1b期から4期まで、すべて放射線だけで治療するべきです。今や、放射線治療ができることを患者に説明せずして、手術だけを勧めることは犯罪です。しかし現実には婦人科医は、前述したイタリアでのくじ引き試験の結果を大学の講義で医学生に教えることもしないのです。そうであれば、放射線治療のことを患者に教えるはずもありません。
女性読者はこのことをよく覚えておいて、婦人科医から手術と言われたら、放射線治療医を訪ねて、セカンド・オピニオンを得るべきです。セカンド・オピニオン代わりになる本としては、子宮がん体験者らが書いた『子宮・卵巣がんと告げられたとき」(岩波アクティブ新書)があり、役に立ちます。


子宮頸がんでは、化学放射線療法に注目が集まっています。外国で行われた幾つかのくじ引き試験で、放射線だけで治療するよりも、化学放射線療法のほうが生存期間が長かったからです。それで米国では、化学放射線療法を標準的な治療法と見なす傾向にあります。しかし、英国やカナダでは、もっと慎重です。放射線治療と化学放射線療法とで生存期間に差がないという結果に終ったくじ引き試験もあるからです。複数のくじ引き試験の結果が対立している場合には、2つの方法にそう差がないというのが真実でしょう。
子宮頸がんの組織型は、これまで「扁平上皮がん」が多かったのですが、最近では「腺がん」が増えてきています。そして日本には、腺がんは放射線感受性が低い、と考える医者が多く、放射線治療医の中にもいます。しかしこれは誤解です。乳がん、前立腺がんは腺がんですが、放射線感受性が悪いからこそ、放射線治療が盛んに行われているのです。八章で紹介した子宮頸がん患者A子さんの組織型も腺がんでした。欧米では子宮頸がんの腺がんに当然のように放射線治療を施行しています。

なお、ゼロ期、1a期、および平らな1b期の病変は、無治療・様子見という方針も成り立ちます。