造血幹細胞移植で女性ドナー死亡
日経新聞 2003.2.11より
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●まずドナーの年齢が問題。このような年齢でも”人のためになりたい”との思いは良く理解出来るが、全体のことを考えて戴かないといけない。死亡の原因が造血幹細胞を増やすためドナーに使われたG−CSFによるものと断定は出来ないが、若ければその投与が不要であった可能性、あるいは死亡に至らなかった可能性がある。いかなる医療上の行為も体が耐えてこそクリア出来、医療上のメリットも発生するのであって、体力が衰えていることは誰も否定出来ない年齢であることを、医師は勿論であるが本人も十分自覚しないといけないだろう。このような事例は、本人の志と裏腹に負の影響を社会に与えることになる。
●しかし、なんと言っても最大の問題は”造血幹細胞を増やすためG−CSFをドナーに投与する”行為そのものであろう。
この行為はある意味で希にドナーが”ガンになっても仕方がない”という開き直りの処置だ。
リスクは小さいと関係者は云うだろうが、リスクがゼロでないことは確かであり、だからこそ今頃になって実際提供したドナーはあとあと健康診断が要ると知らされる。ドナーにそのリスクを伝えてこなかったことは、善意の人に対する背信行為である。
●2番目の引例を見るまでもないが、白血病にも色々あり発生メカニズムは研究途上であり、また、移植自体の成功率も決して高いとは云えない。最後の例は移植失敗にはカウントされていないだろう。しかし、どうひいき目に見ても移植による死だ。
移植→拒絶反応→免疫抑制剤→肺炎で死亡
は、かなり確率の高いコースである。従って移植医療はゴール間近という状況とは云えない。
先走りすぎ、急ぎすぎの誹りは避けられない。移植の成功率は、移植事例の全データが公開されているわけではないので分からない。救われる人の背後に善意の人の苦しみがあることを、医療関係者は真摯に受け止め、今後のあり方を考え直すことが肝要だと思う・・・造血幹細胞移植 女性ドナー死亡 白血病で、学会調査 (日本造血細胞移植学会/日本経済新聞 2003.2.11)
(河敬世会長)は十日、白血病治療などのために健康な人の血液中の造血幹細胞を移植する「末しょう血幹細胞移植」でドナー(提供者)となった女性(63)が移植後に白血病を発病し、死亡したと発表した。同移植でドナーが白血病発症で死亡したのは世界で初めてという。
学会は造血幹細胞を増やすため移植前にドナーに使う薬剤(G−CSF)が関係している可能性があることから緊急調査に乗り出した。細胞を提供したドナーには学会主催の定期健康診断を一年に一回受けるよう強く求めていく方針だ。(金沢大学アイソトープ総合センターのレポート 金沢大学医学部中尾眞二他著の報文の考察から引用)
NK細胞性白血病は,NK細胞にEBウイルスが感染することによって発症する稀な白血病である。経過は一般に極めて急速であり,多くの例は1年以内に死亡する。このタイプの白血病細胞は薬剤耐性遺伝子を高頻度に発現しているため,ほとんどの抗白血病薬に耐性を示す。このため,長期寛解例の報告はほとんどなく,生存例は骨髄移植が成功した一部の例に限られている・・・松仁会医誌35:(1)9-14,1998 吉原隆夫/松下記念病院 他 の報文より
第3寛解期にあるPhiladelphia染色体(Ph1)陽性急性リンパ性白血病の4歳男児に,父親の骨髄から免疫磁気ビーズ法によりCD34陽性細胞を選択的に採取した後,それらを用いて骨髄移植を施行した.
前処置は放射線全身照射(TBI) (12 Gy),ブスルファン(Bu) (4 mg /kg x 2 days),メルファラン(L-PAM) (70 mg /m2 x 3 days)であった.
CD34陽性細胞2.1 x 106 /kg (T細胞:6 x 104 /kg)を移植した.GVHDはgrade Iであった.移植後32日にサイトメガロウイルス抗原血症が強陽性となったが,ganciclovir,foscarnetと免疫グロブリンの併用療法にて速やかに消失した.患児は移植後50日に真菌による肺炎にて死亡した.