gait

歩行について

 

歩行周期の種類と正常値

 

・歩行周期は立脚相と遊脚相に分けられ、各相は更にいくつかの相に分けられます。

立脚相:1)踵接地  (heel strike)

2)足底接地(foot flat)

3)立脚中期(mid stance)

・抑制期:遊脚相で失われた体幹の平衡

を元に戻そうとする時期

4)踵離地  (heel off)

5)足趾離地(toe off)

・推進期:足趾が地面を蹴って推進力を

かける時期

 

立脚相は1歩行周期のうち約60%の時間を占めています。

踵接地0%を起点にすると、

足底接地は15%、踵離地は30%、足趾離地は60%の時点でそれぞれ生じます。

遊脚相は1歩行周期の約40%にあたり、以下の相からなります。

1)加速期  (acceleration):脚が体幹の後方にある

2)遊脚中期(mid swing)   :脚が体幹の直下にある

3)減速期  (deceleration):脚が体幹の前方に振り出されている

・脚が地面について体重を支持するとき、

1脚で支持する時期(single supporting period)と両脚で支持する時期(double supporting period)とがある。

なお、single/double supporting periodは運動力学的分析での用語。

両脚で支持する時期は立脚相と遊脚相の移行期にあり,

これを運動学的分析では同時定着時期(double stance phase)という。

同時定着時期は1歩行周期に10%ずつ2回あり、合計で20%になります。

 

重複歩距離、歩隔、歩行率

 

1)重複歩距離:踵接地から同側の踵が再び接地するまでの距離

自由歩行時では身長の約89%だが、速い歩行では身長の106%にもなります。

2)歩隔:両脚(踵)の前額面での間隔

3)歩行率:単位時間内の歩数のこと。通常は1分間の歩数。cadenceともいいます。

自由歩行時の男性では約110steps/min、女性で116steps/minです。

 

歩行時の膝の角度変化

 

1歩行周期に2回屈曲・伸展する(fl1,fl2,ex1,ex2)

支持脚は踵接地後ただちに少し屈曲すします(fl1)

立脚相後半に体幹が支持脚より前方に移動すると膝は伸展します(ex1)

対側肢が接地すると再び膝は屈曲し、屈曲速度を増して遊脚相となりますが(fl2)

後半では急速に伸展します(ex2)

このときの膝屈曲は遊脚相初期に足を地面から引き離すのに役立ち、

伸展は次の一歩を踏み出すのに役立っています。

・これらの膝の働きを二重膝作用double knee actionといい、重心の上下移動を少なくしています。

歩行時の膝関節の屈伸運動は、

最大屈曲65度(遊脚中期)、最大伸展0度(踵接地)の計65度の範囲で生じます。

 

歩行時の足関節角度変化

 

1歩行周期に2回、背屈・底屈します(df1,df2,pf1,pf2)

踵接地では軽度背屈しているが、次に底屈して足底接地になり(pf1)

ただちに底屈から背屈へと変化します(df1)

この背屈は体幹が支持脚の前方に移動するまで続きます。

その後再び足関節は底屈して踵離地となり(pf2)

足趾離地後は急速に背屈に変わります(df2)

遊脚相では比較的長く背屈位にあり、そのまま踵接地へとつながります。

足関節が底屈の時膝が屈曲し、足関節が背屈の時膝は伸展します

歩行時の足関節の底背屈運動は、最大背屈15度(踵離地)、

最大底屈20度(足指離地)の計35度の範囲で生じます。

 

歩行時の前脛骨筋活動と麻痺

 

前脛骨筋は、遊脚相で尖足にならないように足関節を背屈位に保持し、

遊脚相から立脚相への変換期に強く働いて足関節の過度の底屈を防ぎ、

踵接地のために足関節を固定します。

従って麻痺により遊脚相で足関節が底屈し、その分だけ膝を高く持ち上げ、

踵接地ができずに足趾接地となります

いわゆる鶏状歩行を呈するようになります。

弱化の場合はつま先をペタペタと地面に打ち付けるスタンプ歩行となります。

前脛骨筋は、HCFF、TO期に働きます。

前脛骨筋麻痺:遊脚相足関節底屈、踵接地無、足趾接地、膝を高く上げる

 

歩行時の大殿筋の活動と麻痺

 

大殿筋は踵接地から足底接地にかけて支持脚に体重がかかるときに

股関節を安定させ体幹が前へ倒れないように支持します。

麻痺により、踵接地直後に体幹と骨盤が後方に引かれ、

重心線が股関節の後方を通るようにして股関節屈曲を防ぐ歩行となります。

いわゆる大殿筋歩行です。

両側の麻痺では体幹を常に後方へ傾けた歩行となります。

大殿筋は、HC、FF期に働きます

大殿筋麻痺:立脚相体幹後傾(股関節伸展位)

 

歩行時の中殿筋の活動と麻痺

 

中殿筋は踵接地から立脚中期にかけて、

特に立脚中期に骨盤の側方(遊脚側)への傾斜を防ぎ安定性に働きます。

麻痺がある場合、患側肢に体重が加わると骨盤が対側に傾斜し(トレンデレンブルグ徴候)、

そのため頭部や体幹を患側に傾けて代償するようになります。

いわゆる中殿筋歩行です。

両側の麻痺では体幹を左右に振るよちよち歩行・動揺歩行(waddling gait)となります。

筋ジストロフィーが典型例です。

中殿筋は、HC、FF、MS期に働きます

中殿筋麻痺:患側立脚時に腱側の骨盤傾斜、トレンデレンブルグ徴候、体幹を患側へ側屈

 

歩行時の大腿四頭筋活動と麻痺

 

大腿四頭筋は踵接地から足底接地までと踵離地で活動し、

特に立脚相初期に膝折れを防ぐ働きをします。

立脚相前半では、重心線は膝関節の後方を通るため、麻痺があると膝は屈曲してしまいます。

その為患者は体幹を前屈して重心線を前方に移したり、大腿前面に手をついて支えたりします

下肢を外旋位にしたり過伸展位にして膝屈曲を防止することもあります。

大殿筋で代償するため大腿四頭筋麻痺による異常が出現することは少ない

大腿四頭筋とハムストリングは、遊脚相から立脚相のへの変換期に働き、

遊脚相での下肢の振り子運動を減速して運動の向きをかえます。

また同時に活動する事で股関節と膝関節の安定性を保ちます。

大腿四頭筋は、HCFF、HO期に働きます。

大腿四頭筋麻痺:立脚時に膝を過伸展して膝折れを防止しながら歩行する。

大殿筋で代償するため異常が出現することは少ない。

 

歩行時の下腿三頭筋活動と麻痺

 

下腿三頭筋の働きは前進・加速作用です。

立脚相全般、特に踵離地・足趾離地で強く活動し、

重心線の通る位置を踵から足先に移動させ、

さらに床面からの反作用によって強くけり出して遊脚相に入るのに役立っています。

麻痺により、蹴り返しができず踵で歩く踵足歩行になります。

下腿三頭筋は、HO期に働きます。

下腿三頭筋麻痺:蹴り返し不可、踵足歩行

 

歩行時の重心の上下、左右移動

 

1)上下移動:重心の上下移動は1歩行周期に2回あり、

最も高いときは立脚中期で、最も低いときは踵接地時(両脚支持期)です。

移動の振幅は約5cmで速く歩くと振幅が大きくなります。

 

2)左右移動:最も側方へ移動するのが立脚中期で振幅は約3cmであり、

最も移動の少ないのが踵接地時(両脚支持期)です。

 

骨盤の傾斜変化(歩行周期との関係)

 

遊脚側の骨盤は水平の位置から約5°下方に傾き、立脚中期に最も上方に約5°傾きます。

この傾斜によって立脚側の股関節は相対的に内転し遊脚側は外転します。

体幹が支持脚の直上を通過するときにこの骨盤傾斜が起こるので、

遊脚側は下肢を前方に振り出すために膝関節を屈曲しなければなりません。

骨盤傾斜によって重心点の垂直方向への移動の振幅を減少させています。

 

骨盤の回旋変化(歩行周期との関係)

 

骨盤は垂直軸・水平面に対して回旋運動をします。

運動は股関節で起こり、立脚相初期に最も内旋し、遊脚相初期に最も外旋します

片側で4°、両側で合計8°の回旋があります。

この骨盤回旋によって重心点の垂直方向の振幅の下降部分が少なくなります

大腿骨・脛骨も回旋を行うが

内・外旋が最大になる時期は骨盤のそれと一致します。

角度変化は脛骨が一番大きい。

また骨盤は水平前額軸・矢状面に関しても若干の回旋運動をします。

前方回旋(恥骨結合が前上方に向かう回旋)は踵接地時に

後方回旋は立脚中期にそれぞれ最大となります。

 

骨盤の側方移動(歩行周期との関係)

 

骨盤の支持脚側への側方移動は立脚側の股間節の内転で起こります。

もしも両下肢が完全に平行で、両股関節間が15cmくらいとすると、

立脚側に体重を乗せてバランスをとるには7.cmの側方移動が必要となります。

しかし股関節が垂直軸に対して内転位であること、

および大腿骨と脛骨が生理的外反肢位にあることから、

実際の側方移動は3cmくらいしか起こりません。

人体の構造上、重心位置の側方移動は少なくて済むようになっています。

骨盤の側方移動は1歩行周期の間に左右移動が1回あります。

振幅約3cm立脚中期で側方への変位が最大です。

骨盤の側方移動は、左右移動の減少に役立っています

 

走行と歩行の相違

 

走行の特徴は以下の通り。

 

1)同時定着時期がない。

2)両脚とも遊脚している時期がある

3)減速要素がない。

立脚相に相当する時期に接地するときほとんど重心の直下で

接地するため歩行の際に減速として働く後ろ向きの抵抗がない。

4)接地は母趾球から始まる

5)接地時の地面からの衝撃が大きい。

6)身体の前傾角度が大きい。

7)膝・肘・股関節の屈曲角度が大きい。

膝関節屈曲角大(133度)、股関節屈曲角大(105度)

8)走り始めに大きなエネルギーが必要である。

9)地面との摩擦がより重要となる。

 

歩行の5要素(重心の位置移動に関する因子)

 

1)骨盤回旋:片側で4°、両側で8°

2)骨盤傾斜:片側に5°

3)膝屈曲(立脚相):立脚中期に15° 屈曲、二重膝作用

4)足、膝の関係:足関節が底屈の時膝が屈曲、足関節が背屈の時膝は伸展

5)骨盤の側方移動:3cm

 

両脚で支持する時期は立脚相と遊脚相の移行期にあり,

これを運動学的分析では同時定着時期(double  stance phase)という。

同時定着時期は1歩行周期に10%ずつ2回あり、合計で20%になる。

 

小児歩行の特徴

1歳:足底全体接地、股関節外転(歩隔が大きい)、上肢挙上位

2歳:踵接地、歩隔の減少、踏み出し可、膝の屈伸出現

3歳:各関節が正常に近い、上肢の振りでる

4歳:床反力が正常になる

6〜7歳:正常と同じパターンになる

*歩行率は年齢とともに減少し、歩幅は年齢とともに増加します。

小児は身体の重心位置が相対的に高位で不安定なため

支持基底面の拡大で安定性を確保しています。

歩き始めの上肢は、

high guard→medium guard→no guard(上肢の振り出現)

と歩行開始から短期間に肢位変化します。

 

老人歩行の特徴

1)前傾度の増加

2)上半身の前後動揺が大きい

3)各関節の運動範囲の減少

4)筋活動の相対量の増加、筋活動時間の延長

5)歩行速度・歩幅・歩行率の減少

歩行速度は、62歳以後著しく低下する、この原因は歩幅の低値です。

60歳以後の歩幅の低下は筋力低下が関与し、

歩行率の低下には年齢が関与します。

また、歩行率には重心動揺距離が関与し

重心動揺距離が大きいと歩行率が小さくなります。

 

下肢短縮時の歩行の特徴

下肢短縮歩行:3cmまでは骨盤で代償します

cm以上は爪先で代償し、

cm以上は腱側の膝屈曲で代償します。

cm以下の場合には身体の他部位の代償的な運動で

外観的な異常を認めないときもあります。

cm異常の脚長差があると短い側は肩・骨盤が下がり

立脚相でつま先立ちとなります。

長い側は遊脚相で股・膝・足関節が過度の屈曲をします。

 

膝伸展拘縮時の歩行の特徴

分回し(外転、骨盤の挙上)、背伸び起こる。

患側立脚相での接地の衝撃が大きく

遊脚相では股関節に大きな分回し歩行が生じます。