沙羅双樹と菩提樹

「沙羅双樹が咲いていますか」「菩提樹はどこで見られますか」という質問を受けるとちょっと答えを迷います。
この名前で表される植物がいくつかあり、質問者が考えているものと植物園で考えるものが異なることが多いからです。
「仏陀入滅のとき、東西南北に生えていて時ならぬ花を咲かせたと伝えられる木」と言えばフタバガキ科のサラノキ(2本づつ生えていたのでサラソウジュ)ですが、日本では温室がないと育たないため、多くの寺院ではツバキ科のナツツバキ(別名サラノキ)が「仏陀入滅ゆかりの木」として植えられています。
菩提樹も、本来のクワ科のインドボダイジュが日本では育たないため、代わりに、シナノキ科の植物の1つをボダイジュと名付け、「釈迦が悟りをひらいたゆかりの木」としています。
でも仏教が伝来した時代と異なり、今は温室でインドの植物を見ることもできます。仏陀の故国インドと、仏教が深く根を下ろした日本、両方の「ゆかり」を知り、インドで生まれた教えが日本まで広まった長く遠い道筋を思うのもいいのではないでしょうか。

沙羅双樹 サラソウジュ
サラノキ
釈迦入滅(亡くなったとき)の聖木
インドでのもともとの木 日本でゆかりとされる木
日本での正式名 サラノキ(シャラノキ)  インド名シャーラから ナツツバキ(シャラノキ)
フタバガキ ツバキ
学 名 Shorea robusta Stewartia pseudo-camellia
原産地 インド中部〜ネパール、アッサム(標高1500mくらいまで) 本州(福島県以南)、四国、九州、朝鮮半島南部

サラノキの葉 (モノサシは20p)

ナツツバキの蕾

 花 
どんな木 高さ30m以上直径1mになる。雨季と乾季のはっきりした地域に育ち、乾季には落葉する。東インド、ガンガ中流域の仏跡あたりでは3月中旬頃白い花が咲き、香りが満ちるという。半ば下垂する大きな円錐花序に3pほどの花がたくさん咲く。ライラックの花序を思いうかべれば近いだろうか。フタバガキ科特有のドングリにウサギの耳状の羽をつけたような実をつけるが羽は「フタバ」ではなく5枚。ショレアShorea属の樹木は「ラワン材」としてよく知られているが、サラノキの材は堅く耐久性に優れインドでは珍重される。 高さ10mくらいになる落葉高木。6月下旬から7月にツバキに似た白い花を咲かせる。樹皮がまだらに剥げるすべすべした赤褐色の幹が美しいが、庭木には同属でやや小型、枝ぶりが繊細で幹の橙褐色が鮮やかなヒメシャラのほうがよく植えられ、両種をあわせてシャラノキと呼ぶことも多い。左のサラノキと誤認して名がついたとされるが、花が白という意外に似たところはなく、どのような経緯で混同されたのか不思議である。サラソウジュの異名があるもう一種、エゴノキ科のハクウンボクのほうが花のイメージとしては近いだろう。
植物園では 鉢植えで温室「ハワイアンハウス」に展示するが、花が咲いたことはない。本来は大高木なので温室内での開花は難しいと思われる。(管理の都合で移動する場合があります) ナツツバキ、ヒメシャラ、ヒコサンヒメシャラが「東海の森」、見本庭園など数カ所にある。

菩提樹  ボダイジュ

釈迦正覚(悟りをひらかれたとき)の聖木
インドでのもともとの木 日本でゆかりとされる木
日本での正式名 インドボダイジュ ボダイジュ
クワ シナノキ
学 名 Ficus religiosa Tilia miqueliana
原産地 インド〜東南アジア 中国
  ボダイジュ花(6/8)
左がボダイジュ、右がインドボダイジュの葉      
(並びが逆になってしまいました)
どんな木 イチジクやゴムノキ、ガジュマルなどと同属でガジュマルのように気根を垂らして巨大な繁みをつくる常緑高木。インドでは仏教以前から「森の王」と呼ばれ聖樹とされた。インドの村落では今も大きく枝を張ったこの木の下でさまざまな営みがなされる。先端が長くのびた葉は多雨地帯に特有の形で、雨をスムーズに受け流すように発達したという。右のボダイジュの名前が先に定着したため、和名はインドボダイジュとなった。 高さ10mほどになる落葉高木。ハート形の葉は裏に細かい毛があり白っぽく見える。花は柳の葉のような苞葉の中程から下垂する集散花序。淡黄色の目立たない花だがほのかな香りがある。12世紀の僧栄西が中国天台山から聖木として持ち帰ったとされ、寺院に植えられる。なお、歌に「泉に添いて繁る菩提樹」というボダイジュ(リンデンバウム)も同属の樹木で、香り高い花はハーブティーとして親しまれている。
植物園では 温室「中央ヤシ室」にある。クワ科の木は殺虫剤で傷みやすいものが多いが、この木はとびぬけて敏感で隣の温室で散布した殺虫剤にも反応して葉が落ちてしまうのには気をつかう。 ボダイジュ及び同属の樹木は園内に数本あり


沙羅双樹と菩提樹に加え仏教三聖木とされるのが、釈迦生誕の聖木無憂樹(ムユウジュ、アソカ)です。この木だけ日本で読み替えられた樹種がないのは不思議です。その代り(?)日本で釈迦聖誕祭(灌仏会、花祭り)につきものの木がアマチャ(甘茶)、アジサイの仲間でちょうどこの時期に開花します。




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