☆出血性胃腸炎
 出血性胃腸炎(HGE)は嘔吐,激しい血様下痢,血液濃縮などが急激に発症する原因不明の症候群
である。この疫病は、急性下痢症を発症する多くの症例と異なり、別の機序,病態を示唆する特徴が存在
する。考えられる原因として、内毒素ショック,アナフィラキシ-反応,免疫介在性腸疾患などがあげられているが、
確たる証拠はみつかっていない。可能性として実験的モデルにより、この疫病の病理発生が、免疫反応に
基づいている可能性が高いことを示す報告がされている。罹患犬の腸管の病理組織では、腸管の上皮と
粘膜固有層の壊死,剥離,粘膜固有層への形質細胞の浸潤および粘膜下組織内のリンパ結節の壊死が
認められる。この高度で急性の病理的特徴は、感染や毒素食事性因子によるものでは起こらない。
単独隔離飼育や、多頭飼育の中で1頭だけ発症することなどから、発生状況的に伝染病ではないと考えられる。
発病する年齢では2〜4歳に多く、ミニチュア・シュナウザー,トイ・プードル などの小型犬に多発する。
 
     ☆リンパ球性ー形質細胞性腸炎                                            
 
この疾患は犬に蛋白喪失性腸疾患を起こす2大疫病の1つである。もう1つの疫病はリンパ管拡張症
である。リンパ球性‐形質細胞性腸炎は、単一の疾患ではなく、さまざまな病因と免疫機構による反応の
双方による腸の非特異的複合反応である。関連のある疾患には食物アレルギー,リンパ管拡張症,
腸絨毛萎縮などがある。正常でも分解・再生される血漿蛋白質の約40%は胃腸間から失われる。
蛋白喪失性腸炎で蛋白質の失われる機構にはリンパ管性と粘膜性に分けられる。組織学的に、
小腸粘膜固有層へのリンパ球と形質細胞の大量の浸潤が特徴である。免疫機構が発病に関わっていると
考えられるが、原因ははっきりしていない。    
    ☆好酸球性腸炎   
  好酸球性腸炎とは、末梢血中好酸球数の増加と、胃腸管に好酸球が粘膜に浸潤した病変が散在性に
認められる疾患である。原因ははっきりしないが腸管内,あるいは腸壁内の抗原に対するアレルギーおよび
免疫反応が起こり、好酸球の循環血中での増加や、腸管浸潤の機序が起こると考えられている。好酸球性
腸炎の原因として最も可能性の高いものは食事性抗原であると考えられている。この疾患では蛋白喪失性
腸炎を伴い、嘔吐,下痢その他さまざまな症状が現れるが、特に一定の症状は現れない。食事性抗原が有力な
原因である理由として、食事管理により好酸球の増加が認められなくなることや、症状が改善されることが
認められるからである。好酸球が粘膜に浸潤し蓄積したことによる変化は、肥満細胞と好塩基球により
放出される化学送化性因子により起こり、これは即時型過敏症タイプと考えられる。引き続き補体や感作
Tリンパ球からの放出による、遅延型細胞性過敏症反応も、 一部起こると考えられる。即時型過敏症反応が
反復することにより、抗原に反応したIgE抗体を持つ肥満細胞に結合、脱顆粒を起こす。
好酸球はその部位に移動し、急激な即時型過敏症反応を軽減する役目を果たしている。
 
     ☆腸リンパ管拡張症
  腸管のリンパ管拡張症は腸絨毛の粘膜および粘膜下組織内のリンパ管が、嚢胞状の拡張と機能不全を
特徴とする蛋白喪失性腸障害である。蛋白喪失性腸障害は本疫病の他にリンパ球性‐形質細胞性腸炎,
好酸球性腸炎,肉芽腫性腸炎,腸管ヒストプラズマ症,うっ血性心不全,腸管リンパ肉腫,グルテン性腸炎,
全身性エリテマトーデスなどがあり、原因は異なるが結果として、腸管から血漿蛋白質が大量に失われ、
低淡白血症となる慢性全身疾患である。リンパ管拡張症が起こる原因には、先天性のリンパ管形成不全
による獲得性リンパ管拡張症,炎症や脂質の刺激による肉芽腫形成によるリンパ管の閉塞,心疾患による
リンパ管が静脈循環に入る部位で静脈圧が亢進することによる腸内リンパ液の停止,および腹腔内や
腸管内への漏出,閉塞性胸管障害があげられる。
 
     ☆偽膜性大腸炎
  ヒトでは、本疾患は抗菌薬の使用による、腸内細菌叢の破壊の結、Clostridium 属が増殖し、その中でも
腸毒素産生細菌であるC.difficle の過剰増殖により発症するといわれている。C.difficle は下痢を起こして
いる犬や健康な動物から検出されているがヒトでいわれている抗生物質関連性下痢における、C.difficle 
の細胞毒による偽膜性結腸炎との病態的関連性についてはまだはっきりしていない。この疾患に関与している
と考えられている抗菌薬には、アンピシリン,セファロスポリン,クリンダマイシン,リンコマイシンなどである。
 
              犬の診療最前線・interzoo より